自動車部品製造業界の市場動向
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目次
- ・業界定義
- ・業界分析
- ---⑴事業の特色
- ---⑵業界動向
- ---⑶自動車業界の現状
- ---⑷自動車業界の変革が自動車部品業界に与える影響
- ---⑸課題と展望
- ---⑹競争の激化
- ・M&Aの事例
業界定義
自動車部品製造業とは、主として自動車部分品及び附属品を製造するが、自動車完成品を製造しない事業所をいいます。
また、構成部品点数が約3万点に及ぶとも言われる大規模な組立加工産業でもあります。
自動車部品産業には、
・特定の部品領域を中心とする専業系メーカー
・複数領域横断で展開する総合系部品メーカー
・部品メーカーを下支えする加工・材料系メーカー
など多様な企業が存在します。
業界分析
事業の特色
日本の自動車製造業・自動車部品製造業は、完成車メーカーを頂点として、
1次部品メーカー、2次部品メーカー、3次部品メーカーといった階層構造を形成しています。 (それぞれTier1、Tier2、Tier3と呼ぶことも多いです)
また、自動車部品の需要動向は、完成車の生産動向とほぼパラレルに動きます。
業界動向
日本からの輸出台数は平成20年以降漸減傾向が続いている一方、海外生産台数は平成21年の落ち込み以降急速に増加し、国内生産を上回って推移しています。
日系完成車メーカーの多くが、需要地での生産を進めています。
海外生産への移行が進みましたが、現地でのマネジメントがうまくいかなかった企業など、撤退せざるを得ない企業も出ています。
但し、そのような企業はコスト面で海外生産にはかなわず、課題がクリアできるのであれば海外生産への再チャレンジの意向はあると思われます。
自動車業界の現状
自動車業界に、100年に一度ともいわれる大きな変化の波がきています。
その変化として、例えば以下のようなものがあげられます。
・電気自動車(EV)へのシフト
・自動運転の実用化
・カーシェアリングの普及
完成車メーカーは、次の時代における生き残りを目指した熾烈な競争により、
先端技術の取り込みや、業界の垣根を超えた合従連衡などといった動きも目立つようになってきました。
自動車部品業界の構造転換もまた、避けて通れない大きな課題です。
自動車業界の変革が自動車部品業界に与える影響
EVを軸とした次世代自動車への転換による影響
EVの普及は、現在の自動車産業の技術力・競争力の結晶を完全に不要のものとしてしまい、OEMと一次、二次、三次サプライヤーというピラミッドからなる自動車業界のシステムを、根底から書き換えてしまうことが予想されます。
また、複雑な内燃機関が構造のシンプルなモーターに置き換わることで部品の種類・点数が大幅に削減されていることにより、製品市場そのものが消滅しかねません。
加えて、EV化により、自動車のモジュール化がいっそう加速しており、規模の小さなサプライヤーにとって競争環境は厳しさを増します。
実際は、現状ではバッテリー能力に限界があり、バスやトラックなど含めた、全ての自動車がEV化するというのは難しいという意見も多いです。
但し、その一方で、三菱ふそうの開発した中型EVトラック(eキャンター)は、2台のモーターと、大容量リチウムイオン電池を搭載することで、満充電時で200kmの走行を可能としています。
つまり、一晩中走り続けるような中長距離運送用のトラックをEV化することは難しいですが、
宅配や短距離輸送などの目的であれば、トラックのEV化も既に可能となっています。
課題と展望
自動車部品メーカーに求められる課題は、以下3点に集約されます。
日本企業に必要なのは、特に「コスト」です。
TGKにおいても同じ問題を抱えており、生産管理の改善や海外生産への移行によるコスト削減を自社の課題と認識としています。
競争の激化
完成車メーカーは、安定調達やコスト削減の観点から多くの部品について複数の部品メーカーから調達します。
その結果、以下のような事象が発生します。
・同一部品について複数の部品メーカーが存在
・新興国の自動車部品・素材メーカーの技術力が向上
・海外からの部品調達を増やしてコストを削減
同一部品を製造できる会社はあるが、不良品が見つかった際に特定が困難となる為、メーカー側も同一部品を複数の企業に同時に製造させることが良いとは思っていません。
何か理由があれば別だが、部品メーカーを変えることは、完成車メーカーとしてもメリットがありません。
このような環境であるため、国内での自動車生産においても、さらなるコスト削減が求められています。
M&A事例
・ニチアス(譲受)×日本ラインツ(譲渡):子会社化
平成28年11月21日
プラント向け工事・販売事業、工業製品事業、高機能製品事業、自動車部品事業、建材事業を営むグループの持株会社であるニチアスは、自動車エンジン用ガスケットの設計・製造を行う日本ラインツの発行済株式の100%を取得すると発表しました。
日本ラインツは、ニチアスと事業領域が密接に関連しており、両社が保有する独自の技術力、ネットワークを融合し最大限活用することで高いシナジー効果を期待でき、顧客ニーズに応えられると見込んでいます。